〒101-0031東京都千代田区東神田1-13-17 森ビル1F
Google マップで見る >

OPEN 12:00  CLOSE 18:30(土17:00、日18:00)
休廊日は展覧会により異なります

03-6206-0811

OPEN
12:00
CLOSE
18:30
(土17:00、日18:00)

休廊日は展覧会により異なります

關まどか 釉の佳景をもとめて

2023.08.31

2023.08.31

本日は、8月29日(火)から個展を開催している、關まどかさんの作品についてご紹介いたします。

陶芸作家としてご活躍中の關さん。
SAN-AI GALLERYでの個展の際は、毎回驚くほど多くの方々が、作品をお求めにいらっしゃいます。
土の質感がそのまま感じられるかのように、ふわりと彩られた陶器たちは、ずっと以前から身近にあったもののように、するりと日常に溶け込みます。
素朴で暖かみのある飾らない様相が、どんなシーンにも、どんな気持ちにも、優しく寄り添ってくれるのです。

今回の記事では、そんな器を作り続ける關さんが制作の中で特にこだわっている、釉について伺いました。

※ 關さんの制作風景については、昨年開催した個展「秞の景色Ⅲ」の際に本ブログにてご紹介しております。
貴重な制作時の動画も撮影しておりますので、是非併せてご覧ください。

 關まどか展 秞の景色Ⅲ 菊練り〜土殺し
 關まどか展 秞の景色Ⅲ ろくろ成形
 關まどか展 秞の景色Ⅲ 秞がけ〜窯入れ

※ 陶芸の制作過程は下記のような工程で進められます。
1. 粘土成形:菊練りなどを施したのち、ろくろで形を作っていきます。
2. 削り・加工:高台を削り出したり、細やかな表現、調整を加えます。
3. 乾燥:数日間風通しの良い場所で乾燥させます。
 均一に乾燥させないと、焼いた時のひび割れの原因となるため、こまめな調整が必要です。
4. 素焼き:続く施釉のために、陶器の形を固定させます。
5. 施釉:釉薬を施し、陶器に色を加えます。
6. 本焼き:高温の窯でじっくりと焼き上げます。→完成

色をつくる:独創性

關さんの作品の最大の魅力は、器の中で優しく穏やかに広がる色彩です。
手の温かさがじわりと広がるかのような、柔らかなグラデーション。
降り注ぐ雨が、大地に淡く吸収されていくかのような、ゆったりとした景色の移ろいが表現されています。
見る人、使う人に、ふわりと語りかけるかのような色合いは、關さんがオリジナルで作り出している釉薬によるものです。

暖かみのある、たおやかなグラデーションが、器の世界に広がります。

「施釉は、作品を本焼きする直前の作業段階で行います。
ろくろで形を作った後に一度素焼きをして、形を固定した後、いよいよ色をつける感じです。
この釉薬は、高温で焼くとガラス質に変化するものを使用しています。」

釉薬は、石の粉、植物の灰、金属など、自然界にあるものを素材としています。
少しばかり日本画の岩絵の具にも似ているように感じますね。
關さんはこれらを独自の調合でブレンドし、擦り合わせて釉薬を作りだしています。

「釉薬は市販されているものも存在しています。
ですが私は、この釉薬をオリジナルで作り出すことを大切にしています。」

釉薬をブレンドしている様子。
素材をすり鉢で合わせたり、漉したりする様は、化学の実験のような、錬金術のひとコマを連想させます。
まさに“薬”と呼ぶに相応しい工程です。

色をあらわす:試行錯誤

釉薬の制作は、試行錯誤の連続です。
実際に制作した釉薬も、高温で焼くと色味が思いがけず変化するものも存在します。

「この釉薬は、“桜ピンク”という名前のもの。
焼く前の色が桜色なので、この名前をつけています。
でも、実際に焼いてみると、これ単体だけだと茶色になるんです。
制作時を知らない人が聞いたら、名前とのギャップにびっくりする色だと思います。」

画像だと少しくすんでいますが、柔らかく落ち着いたピンク色のトーンの釉薬です。
確かにピンク色の革製品も、使い込むうちに茶色く変化しますが…あんな感じでしょうか?

關さんのオリジナル釉薬には、“スカイブルー”、“マンガンブラウン”など、自然界の言葉を冠した優しいネーミングのものが目立ちます。
焼き上がりの色からつけることもあれば、使用している材料からつけているもの、桜ピンクのように、混ぜ合わせた釉薬の発色から名付けられているものもあり、発想の着眼点は多種多様です。

「桜ピンクは、重ねがけ次第では桜色に発色して焼き上がるんですよ。
その組み合わせ方の工夫や、思いがけず綺麗な発色で焼き上がった時は、とても面白いと感じます。」

試行錯誤を重ねて作り出した釉薬を、さらに数種類重ね合わせることによって、暖かく広がるような色味を表現、追求します。
楽しそうに話してくださる關さんから、熱意と愛情が伝わります。
柔らかな色味の裏には、地道な努力と、膨大な研究・試行錯誤が詰め込まれているのですね。

色をみつける:先見の眼差し

焼いた後でがらりと色の印象が変わる釉薬。
その色彩の変化を予想しながら釉がけをすることも、關さんは制作の魅力のひとつだと教えてくれました。

「こうして施釉して並べた器たちも、焼いた後では色合いが全く違って焼き上がるんです。
焼き上がった時にどんな色に変化するか、イメージしながら釉がけをしています。
どの色を掛け合わせるか、どのぐらい重ねるか、常に完成予想図を思い描きながらの作業です。」

釉薬を施した器たちを窯詰めしたところ。
これから、いよいよ本焼きに入ります…!
左上の桜ピンクを筆頭に、淡い色彩が並んでいますが、さて焼き上がると…?

關さんが思い描いた色の景色が、果たして広がったのかどうか。
完成品や、実際に色がどのように変化したかは、ぜひ会場で直接ご覧ください!

**
關さんの作品は、会期終了を待たずにその場でお持ち帰りできる作品がほとんどです。
同じ釉薬、同じ時期の窯で焼いても、少しずつ色や形の違いがございます。
唯一無二のお気に入りを見つけに、ぜひお早めに会場までお越しくださいませ。

日々の時間を優しく彩る、柔らかな色の器たち。
お手元で釉の佳景がふわりと広がりましたら幸甚です。

關まどか 個展 -釉の景色IV-
2023年8月29日(火) ~ 2023年9月5日(火)
12:00~18:30 / 日曜〜18:00 / 月曜休 / 最終日〜17:00迄

Page Top