丸橋正幸 × 岡田佐知子 -きらら- 開催中です!
- 制作の現場から
2024.01.17
〒101-0031東京都千代田区東神田1-13-17 森ビル1F
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OPEN 12:00 CLOSE 18:30(土17:00、日18:00)
休廊日は展覧会により異なります
03-6206-0811
2023.04.14
本日は4月23日(日)から開催される 綴-ふたり展- に出品される、原こなみさんの作品についてご紹介いたします。
日本画家としてご活躍している原さんのモチーフは、なんと「骨」。
箔の古典技法を取り入れた、日本画の素材による絵画作品を主に制作されている原さんですが、近年はそれらを応用した立体作品の制作も行なっています。
本記事では、現在制作途中の立体作品について、お話を伺いました。
制作過程について、さっそく見ていきましょう!
今回の立体作品には、本物の牛骨を使用します。
モチーフから既にインパクトのある原さんの作品ですが、立体作品はさらに衝撃的です。
まずは、手配した牛骨のにおいと脂を取り除くため、何度も洗浄と煮沸を繰り返します。
作品を制作しているとは思えないような光景と作業です…!
煮沸作業があらかた終了したら、今度はそれらを数日間かけて乾燥させます。
基材となる牛骨の処理が完了したら、今度はそれらに塗料で色をつけていきます。
今回は退廃的なイメージを表現するため、暗い色をチョイス。
何回か色を重ねて塗っていきます。
今回は2度塗りです。
「塗料の粒子感を残したかったので、薄めの色を2度塗りすることで、表情を出しました。」
黒い色の表情がちょうど良くついたら、塗料を乾燥させます。
塗りたての黒い表情から一変した雰囲気が醸し出されてきました。
塗料を完全に乾燥させた後は、いよいよ銀箔を貼っていく作業です。
銀箔を貼るためのメディウムを乾燥させるため、さらにここから数日間放置します。
お次は最終工程、箔焼きです。
焼くと言っても、実際に火で炙ったり焼いたりしているのではなく、銀に硫黄をつけることで化学反応を起こし、色を変色させる工程のことを指します。
硫化すると、銀は時間と共に茶色から黒へと変色していきます。
原さんの硫化の材料は、「湯の素」。
実はこれ、ご自宅で硫黄泉を楽しむための入浴剤として市販されているものなのです。
この「湯の素」を水で薄め、刷毛で丁寧に銀箔の上に塗布していきます。
色合いや風合いの経過を見ながら、微調整を加えていきます。
実はまだ未完成のこの牛骨作品。
今回ご紹介している作品は、展覧会に出品される予定です。
完成した作品がどのような形態となっているのかは、ぜひご自身の目で、ギャラリーにてお確かめください…!
一瞥すると驚くような作品やモチーフを扱っている原さんですが、作品づくりにおけるコンセプトは、おそらくそれらの(一般的なイメージにおける)インパクトとは真逆の価値観から生じているようにも感じられます。
骨だけでなく、流木も作品モチーフとして取り上げることの多い原さん。
制作の根底にある想いや原動力について、こう語ってくれました。
「私は、自分の魂と肉体が別々に存在している感覚があるんです。
“目に見える外側=肉体”と“目に見えない内側=魂”について。
これが私の作品テーマです。」
肉体が朽ち果てた末、最後に残る「骨」。
漂流して、風化し、岸辺に流れつく「流木」。
このふたつの姿が重なって見えるのだと、原さんは教えてくれました。
「外側に存在する肉体(物質)が滅んでも、この世に執着し、現存する魂の存在(精神)そのもののように感じます。」
骨も、流木も、それらのモチーフが共通して伝えてくるもの。
朽ちていく年月の重みと、二元論的な表象イメージ。
この言葉は、ひとえに原さんが制作を通して見ている世界であり、抱く感覚そのものなのです。
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作品制作における哲学や、根底に息づく意図を知ると、日本画という技法、“朽ちていく”ような箔の変色とその表現、骨という題材といった構成要素が、絶妙なバランスで共生し、原さんの世界観を表していることがひしひしと感じられます。
それらはまさに、日本人が血脈とする「侘び寂び」の精神を、ダイナミックに表現した、ひとつのかたちなのではないでしょうか。
展示される作品から、時間や輪廻、物質性と内在世界について、想いをめぐらせるきっかけとひとときが供されればと願っています。
綴 -ふたり展- 宮本千瑞 原こなみ
2023年4月23日(日) ~ 2023年4月29日(土)
12:00~18:30 /月曜休 / 日曜〜18:00、最終日〜17:00迄