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Blue:山口茉莉 静謐なる青を覗いて

2023.06.11

2023.06.11

本日は、6月13日(火)から開催されるグループ展「Blue」に出品される、山口茉莉さんの作品についてご紹介いたします。

SAN-AI GALLERYでは、色にまつわるテーマのグループ展を度々企画していますが、山口さんはそれらの展示ではお馴染みの作家さんです。
今年も開催されるBlue展では、山口さんらしい幻想的で独創性ある「青」の世界を魅せてくださいます。

SAG-repo.では2回目のご紹介となる山口さん。
前回はコラージュ作品の制作風景をお伝えしました。
 in RED 山口茉莉 小さな赤い額の中
昨年のBlue展やSAG repo.記事、DM作品の印象から、額内を宝箱のように見立てたコラージュ作品のイメージが強い山口さんですが、本来のご専攻手法は版画制作です。
本記事では、Blue展に出品予定のリトグラフ作品「Twilight VIII -Misty Morning-」の制作過程をお伝えいたします。 

リトグラフとは

実際の制作工程をご紹介する前に、リトグラフという手法をおさらいしておきましょう。

版画の制作技法のひとつとされる、リトグラフ。
18世紀末、とあるドイツ人が楽譜の印刷を行うために発明した手法です。
ギリシャ語の”Lithos(石)”に由来する語で、平らな石の上に線を描き、それをそのまま印刷するという手法から、石版画、平版とも呼ばれています(現在では金属版も使用します)。
版画というと板を削って描画する印象がありますが、リトグラフでは、版は一切削りません。
描画した線を、化学反応を用いて直接紙に転写するため、多色刷りや、画材によるタッチや微妙なニュアンスも表現することが可能です。

基本知識を理解したら、いよいよ山口さんの制作風景を見ていきましょう!

描画と製版

まずは、イメージを版に描画していきます。

制作のメインとなる「主版」(描画版)作成の様子。
アルミ版の上に、油性の描画材を使用して描いていきます。

ここで特筆すべきは、油性の描画材を使用するため、やり直しができないということ。

「失敗しても消しゴムで消すことができないので、慎重に描画していきます。」

モチーフを水性顔料で版に一度トレースをした上から、油性画材でなぞるように描いていきます。

プレス〜刷り

製版が完了したら、次はプレス機を使用してプレスを行います。

「“平版”の名の通り、彫ったり盛りあげたりすることのない、平滑な版が特徴です。」

制作工程の前半部分は、下記リンクから動画にてご覧ください。

1版目のプレス=クリーム色のベタ版の刷りを経て、主版=描画版の刷りの様子(インクを載せて、プレス機にかけるまで)が確認できます。

「インクは黒に見えますが、濃いグレーにこだわって調色しています。
鉛筆の鉛に近い色です。」

動画の工程の後は、刷り上がったものを確認します。

建物の地の色であるクリーム色の上に、鉛色の線画が重ねて刷られました。

「同じように刷れなかったものは、エディションとしてカウントできません。
描画の時と同じぐらい、集中力を必要とする作業です。」

色むらや線が、他と比べて均等であるか。
入念にチェックします。

そして、工程は最後のベタ版へ。

いよいよ青のインクが登場です。

透明から淡い薄紫色のグラデーションを表現します。
3版目の版にインクを乗せたところ。
この作品では3つの版が使われることで、一つの作品を作り上げていることがわかりますね。

実際に青を刷り重ねた作品はというと…

静謐な背景が生まれました。

完成

いくつもの工程を辿って完成した作品、展覧会前にひっそりとお見せします…!

「Twilight VIII -Misty Morning-」
額装するとこんな感じです。
タイトルとエディションNo.、山口さんのサインが添えられています。

画像だけでも、周囲の音が立ち消えるかのような、静謐さを携えた作品であることが伝わってきます。
実際の作品を前にすると、その凛とした佇まいから、世界観に引き込まれる不思議な瞬間を体験されることでしょう。
目前となりましたBlue展、深淵なる青の世界に溺れてみませんか。

Blue
山口茉莉 志賀直美 丸橋正幸 山本晃代 藤林麻美
2023年6月13日(火) ~ 2023年6月24日(土)
12:00~18:30 /月曜休 / 日曜12:00〜18:00、最終日〜17:00迄

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