丸橋正幸 × 岡田佐知子 -きらら- 開催中です!
- 制作の現場から
2024.01.17
〒101-0031東京都千代田区東神田1-13-17 森ビル1F
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OPEN 11:30 CLOSE 18:00(最終日17:00)
休廊日は展覧会により異なります
03-6206-0811
2023.06.15
今回は2023年5月28日から6月3日まで個展を開催していた画家・大西佐頼さんの制作風景をご紹介します。
ご自身の制作について
「写真で工程を見るとけっこう簡単に描いているように見えますね。実際はそうでもないです。」と語る大西さん。
いやいや、簡単に描いているようには見えませんが…。
大西さんは、キャンバスに向かったときにその時の「気分」を大事にしています。
今回展示した作品でも、気持ちよく色面を作った後で、どうしようか考えている時間がだいぶ長かったそうです。
筆を握って描いている時間より、圧倒的に考えている時間が長いのです。
さらにいえば、気持ちよく色面を作るその前にまっしろなキャンバスの前で何をどう描こうか考えている時間も長いです。
気が付いたらぼんやりしています。
ぼんやりしているようでぼんやりしています。
展示が始まる直前など、時間がない時間がないと言って慌てていますが、大西さんはそれでも絵の前で長い時間ぼんやりしています。
基本いつもぼんやりしていますが、一方で気分が乗ってしまうと、寝食を忘れて制作に没頭します。
すると、今度は中断することが難しくなってしまいす。
話しかけられても気のない返事しかできないので家族にも呆れられてしまうだとか。
本当は子供のようにあれやりたいこれやりたい今すぐやりたいという思いを、大西さんは毎日抱えています。
「嫌いじゃないけど今はこれやりたくない、ほかにやらねばならないことはたくさんあるけれどどうしても今これやりたい、そういう衝動が人より強いのかもしれません。」とは大西さんの自己分析。
そんな「今すぐやりたい」という衝動の強弱は人と比べようはありませんし、もしかしたら多くの人はわざわざそれを口にしないだけなのかもしれません。
ただ大西さんは、絵を描いている以外の時間はだいたい今やりたいことと、やらねばならないことが嚙み合わないので、必死にこらえて大人としてふるまっています。
一人の大人として、気の進まないことでも一生懸命取り組み、やるべきことをやるようにご自身を仕向けていますが、一人の画家としてはキャンバスの前で「なんかこういう色の色面つくりたい」というような衝動的なものを大切にしているのです。
そんな時、自分を大切にしている感じがしてくるのだといいます。
人生何年かの一続きの時間のうち、今目の前を何分とか何秒とかの時間が過ぎていって、その時間は二度とかえってきません。
今感じていることは、何らかの形で表現できなければ膨大な時間の中に埋もれていきます。
動物を見ていて、ある瞬間に「これ」という表情を見せたり、大西さんの心の状態とシンクロして強烈な感情を呼び起こしたりすることがあります。
その驚きとか心の動きをパッとつかんで描きとめる、あたかもビンに時間を入れてふたを閉めることができたとき、大西さんは絵がうまくいったと感じます。
逆に長期間同じ絵を描いていると、ずっと同じ気分ではいられないので、「こうしたい」という衝動や、表現したい感情にリアリティや新鮮さがなくなってきてしまいます。
そうなると「今」とは違う感情がキャンバスの上に積もってくるので、それ以上描くのが難しくなります。
数か月とか数年単位で感じているものがテーマだったら、それくらい長い制作期間でも描けるかもしれませんが、なるべくそれを避けようとしてしまうのは、大西さん自身がそういう年単位で積み重なったような鬱屈した感情と向き合いたくないのかもしれません。
没頭したら記録なんて残せるわけもなく、いきなりですが完成した作品をご覧ください。
なんだかしんみりと終わってしまった制作レポートでしたが、出来上がった作品には大西さんの子供のような衝動と瞬間がしっかりと切り取られていました。
展示期間中は、動物をモチーフにした大西さんの作品がズラリと並び、朗らかな雰囲気になったギャラリーに多くの方が足を運んでくださいました。
残念ながら見逃してしまった方に向けて、少しではありますが夕暮れ時に映える展示風景をご覧ください。
大西佐頼個展
2023年5月28日(日) ~ 2023年6月3日(土)
12:00~18:30 /月曜休 / 日曜〜18:00、最終日〜17:00迄