丸橋正幸 × 岡田佐知子 -きらら- 開催中です!
- 制作の現場から
2024.01.17
〒101-0031東京都千代田区東神田1-13-17 森ビル1F
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OPEN 11:30 CLOSE 18:00(最終日17:00)
休廊日は展覧会により異なります
03-6206-0811
2023.11.08
本日は、11月14日(火)から個展を開催される、中村幸喜さんの作品についてご紹介いたします。
ジュエリー作家である中村さん。
非常に細やかな草花のモチーフを主とした、シルバー鋳造による作品を制作されています。
小さな花々が幾重にも連なる様は、さりげなく存在を示す可憐な花の姿を思わせるものもあれば、どこか七宝文様を思わせるような、伝統と艶やかさを感じられるものも見てとれます。
普段は繊細なシルバーによる作品を作り続ける中村さんですが、今回はお馴染みのシルバー作品に加え、その制作から一歩進めた、色とりどりの七宝作品を展示予定です。
本記事では、今回かねてより挑戦したかったと話されている七宝作品の制作現場の様子をお届けいたします。
七宝が登場する前に、まずは土台となるシルバー部分を作成します。
シルバージュエリーの制作方法としては、大きく分けて2つの方法(鋳造or鍛造)が存在します。
中村さんが用いるのは、「鋳造=キャスト」と呼ばれる技法です。
シルバー作品として作りたい形の原型を、予め樹脂ワックス(蝋)で形づくります。
ワックスなので金属よりも柔らかく、加工が容易のため、細かい表現やニュアンスが表現できることが利点です。
その後、周囲を石膏で固め、これを加熱して中にある先ほどのワックスを溶かします。
ワックス部分が除去され、空洞になったところに溶かした金属(=「湯」と呼ばれます)を流し込むことで、原型と同じ形が鋳造されるという仕組みです。
ワックスを取り除くという制作手順にちなんで、「ロストワックス製法」または「ロスト ワックス キャスティング」などと表記されることもあります。
縮めて「キャストする」という単語でも、鋳造するという意味で使用されるようです。
(もう一方の「鍛造」は、文字の如く、金属をたたいてつくる技法を指します。)
はじめは、ワックスを使用した原型を作成します。
今回は七宝をのせていくため、色彩が映えるようシンプルな形を意識して作ります。
上記の画像は、キャスティングが完了して、シルバーの形が整えられた状態です。
湯道(※後述)や表面の凹凸に手が加えられ、すっきりとシンプルな形が出来上がりました。
※ 金属を流し込むという性質上、石膏には湯道(ゆみち)と呼ばれる、湯=金属を流し込むための通路が存在します。
この部分にも金属が残ったまま鋳造されてしまうため、キャスティングが完了した後、この部分を削って取り除く必要があります。
シルバーの表面処理が終わったら、いよいよ七宝釉薬を先ほどのパーツにのせていきます。
この後、窯の中で七宝を溶解させます。
七宝の釉薬はガラスでできているため、温度に注意を払いながら、数分間ゆっくりと溶かしていくのです。
この工程も、ただ単に窯に入れて溶解させているわけではありません。
理想の表面や透明感、色の出方などを意識しながら、釉薬の量、窯の温度、溶解時間を工夫し、細かな調整や試行錯誤を加えながらの作業です。
画像に写っている、下に敷いている白い台は、耐火煉瓦のようなものだとか。
「作品が小さいので、そこまで気にしなくても大丈夫なのかもしれませんが…。
念のためいつも使用するようにしています。」
熱した地金と釉薬を急冷させないように、という中村さんの配慮と、作品への愛情が感じられます。
ゆっくりと熱が冷め、釉薬が定着したら、再度表面を整えていきます。
余分な箇所を削ったり、凹凸を丁寧に取り除いたりと、目指す理想の状態へと仕上げていきます。
いよいよ完成です…!
鋳造の原型制作で扱うワックスでの表現を大切にしているという中村さん。
細やかな表現が可能だとされる制作技法の特徴だけにとどまらず、繊細で丁寧な仕事の様子が、七宝での表現にも存分に発揮されていることが伝わってきます。
会期中は、七宝作品の他にも、DM掲載されているロボットの作品(なんと展示を始めた頃から、毎回個展の際に登場するモチーフなのだとか)、草花をはじめとした自然のモチーフが数多く並ぶ予定です。
通常の個展よりも会期が少し長く設定されておりますので、ぜひお時間を見つけて実物をご覧いただければ幸いです。
ご自身を繊細に彩る、きらりと光るモチーフとの出会いがありますように。
中村幸喜 個展
2023年11月14日(火) ~ 2023年11月25日(土)
12:00~18:30 / 日曜 12:00〜18:00 / 月曜休 / 最終日〜17:00迄