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休廊日は展覧会により異なります

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辻本喜代美 アプロディアを探して

2023.04.07

2023.04.07

本日は4月16日(日)から“陶展”を開催される、辻本喜代美さんの作品をご紹介いたします。

“陶展“とあることからお分かりのように、辻本さんの作品は陶芸です。
陶芸セラピーカウンセラーとしても活躍されている辻本さん。
その作品は、柔らかく包み込むような、そしてどこか神秘的な印象を感じるものが並びます。

手びねり

今回の個展では、手捻りの手法を駆使した作品の数々を見ることができます。

陶芸における最も基本的な技法と呼ばれる「手捻り」。
手びねりという名称を聞くと難しいもののように想像しますが、私たちが幼い頃に、粘土で自由に作品を作るときに行っていた手法が、手びねりです。
平面に伸ばして、好きな形に切り取ったり、装飾を付けてみたり、表面に絵を描いてみたり。
あるいはお皿やマグカップ、動物の立体作品などを作ることもできます。
粘土を自由に手でこねる手びねりは、どんな形でも作り出せる手法です。

辻本さんは、この手法から、空想の化石を作り出します。

実際の化石を作るのではなく、化石をモデルにした辻本さんの空想から生まれた化石たち。
器の側面にも、未知なる古代生物のようなモチーフが姿を現しています。

博物学との出会い

幼い頃から、化石や伝説の生物に心惹かれていたという辻本さん。
16年ほど前に、博物学に出会ったことが、制作のきっかけとなっているのだとか。

16世紀後半に広く発達した博物学は、現在の自然史の前身とされるものですが、自然界に存在するあらゆるものを愛で、収集・記録・分類するところが高じて、人魚の剥製や七不思議を取り入れた記録なども散見されています。

「当時の人々の遊び心と想像力に魅了されたんです。
そんな博物学者になった気分で、空想の化石を作ったら楽しいだろうと思ったことが、作品制作のきっかけです。」

そんな遊び心を体現するように、細かな装飾も、全て手作業で、一つずつ丁寧に作り込んでいきます。
地道な作業ですが、「遺跡発掘作業のように思えて、とても楽しいです」と語る辻本さん。

パーツひとつひとつ、気の遠くなるような作業を、愛情深く作りあげます。

窯焚き

柔らかな粘土から空想の化石を成形した後は、窯焚きの工程へ。

素焼きの窯出し風景。いくつかの作品を並べて焼き上げます。

窯焚きの作業は、最低でも2回は行われます。
1回目は「素焼き」と呼ばれる、成形・乾燥を終えた生素地を低温で焼くものです。
低温といえども、窯の温度はなんと700度にも達します。
そこに作品を入れ、じっくりと火を入れていきます。
この段階で作品が破損したり、ひび割れが起こったりすることもあり、焼き上がるまでは非常に緊張する段階です。

「一番緊張する瞬間です。これがうまくいくと、7割ぐらいは安心の気持ちが生まれます。」

うまく焼き上がりました!

2回目は、釉薬を施してから行われます。
いわゆる、作品に色つけを行う段階です。
辻本さんは釉薬を施す前には、象嵌と呼ばれる工程も行います。
(ぞうがん=装飾工芸の手法で、作品の表面を彫り、異なる色の土や素材を嵌め込んで模様をつける作業)

「象嵌を施すと、作品に魂が宿った感じがします。
作品に表情が生まれ、語りかけてくるんです。」

DMに使用されている作品「青い花の女神」。
丁寧に、愛情と細心の注意を払いながら色をつけていきます。
「作品を晴れ舞台に送り出すための、メイクアップの作業」だと辻本さんは話します。

その後、生き生きとした表情が生まれた作品たちに、最終工程となる「本焼き」を施します。

「長い時間をかけて作り上げる陶芸は、時を愛でる手仕事だと思っています。」

辻本さんが時間をかけて作り上げた作品の数々。
完成した姿は、会期当日までのお楽しみです。

「アプロディアを探して」

個展のタイトルにもなっている「アプロディア」。
女神の名前のようにも感じますが、実は辻本さんが出会った一冊の絵本から、名前が取られています。

―――美しい音楽を食べ、人々に幸せをもたらすという伝説の花、アプロディア。
その花を探しに、博物学者とコンゴウインコの旅が始まる。
そんなストーリーです。

「この物語には、ずっと好きだったものがきゅっと詰め込まれていたんです。
博物学、化石、その他諸々…この絵本の世界を、自分も、陶作品で綴って旅をしてみたい。
それが今回の展示のテーマとなっています。」

実は、辻本さんの化石の作品は、長いこと表に出す機会がなかったそうなのです。
化石を制作する事がとても楽しかった当時、大好きが故に、自分がやりたいことと、外から求められているもの(辻本さんがもともと制作していた、可愛らしい動物のシリーズ作品)との融合点が見つからず、バランスが取れない辛い状況から、やむなく距離を置いたといいます。

長いこと日の目を見なかった化石の作品たち。
数年前に少しだけ復活させてみたところ、タイミングが重なるように、上記の絵本と出会いました。
絵本の世界を自分も表現しようと決めたところ、不思議と、今まで見つけられなかった他の作品や作風との融合点がふと見つかるようになったそうです。

絵本から着想を得て、アプロディアを探す旅にでた辻本さん。
作品と向き合う旅の中で、アプロディアが果たして見つかったのか…。
ぜひ展覧会で、その旅路の軌跡をご高覧ください。
そしてご来場くださった方々のアプロディアが、見つかる場所であることを祈って。

辻本喜代美 陶展 - アプロディアを探して –
2023年4月16日(日) ~ 2023年4月22日(土)
12:00~18:30 /月曜休 / 日曜〜18:00、最終日〜17:00迄

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