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休廊日は展覧会により異なります

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纐纈浩美展 物語を、かたちに

2023.03.21

2023.03.21

本日は、4月23日(日)から個展を開催される、纐纈浩美さんの作品についてご紹介いたします。

DMにも使用されている作品「甘いお誘い」。
たくさんの花々の中に、赤ずきんちゃんと狼のモチーフが可愛らしく、そしてどこか怪しげにも浮かび上がります。
今回は、左側に位置する狼の制作過程を伺ってきました。

「打ち出し」

纐纈さんのモチーフは彫金で制作されています。
「打ち出し」と呼ばれる技法を駆使し、銀板に物語のモチーフを浮かび上がらせていきます。

まずは銀板の上にモチーフを下書きしていきます。
その後、下絵に則して、鏨(タガネ=鋼鉄で作られた金属を加工する工具)と、おたふく槌(かなづち)で形を打っていきます。

「彫金の道具は聞きなれない名前が多く、そこも特別感があって気に入っています。」

銀板に下絵の線がうっすらと残っている、打ちはじめの段階。
奥に見えるたくさんの棒が鏨(タガネ)です。

鏨は、さまざまな大きさや形のものを状況に応じて使い分けます。

段々と狼の表情がくっきりと表現されてきました。

この、鏨での打ち出しは、「焼きなまし」と呼ばれる作業を繰り返しながら行われます。

テレビなどで見た刀打ちのシーンを思い浮かべてみてください。
火で熱した金属を槌で打ち込むことで、形を整え、金属を強固にしていく。
その作業です。
金属は熱すると柔らかくなりますが、それだけでは素材が不均一で、加工の際に変形や反りができてしまいます。
それを徐々に叩いて冷ましていくことで、素材をより滑らかに、強固なものへと変化させていくのです。

纐纈さんの彫金制作も、これと同じ過程を辿って作品が作られていきます。
文字と画像で表現するとあっという間ですが、とても根気のいる、時間のかかる作業です。

しかし纐纈さんはこう語ってくれました。
「鏨を打つカンカンと響く音が心地よく、ゆったりとした時間を楽しみながら制作しています。」

ひたすらに素材と向き合う

何度も叩かれた銀板には、一通りの輪郭が打ち出され、狼が立体的に浮かび上がってきました。
モチーフが打ち出されたら、銀板を切り出して…

完成形に近づいてきました

モチーフの「仕上げ」

形が整ってきたら、今度はさらに細い「毛彫鏨」を用いて仕上げをしていきます。

下に見える黒いものは「ヤニ台」と呼ばれるもの。
松脂で金属を固定することで制作を進めていきます。

色あげ

そして、最後に「色揚げ」と呼ばれる着彩方法で、色味を加えていきます。
薬品を配合した液体につけて金属に化学反応を起こすことで、変色をさせる作業です。
今回ご紹介している狼は黒ですが、別の作品では、なんと白くなるものもあるとか。

「同じ金属を使っていても、別の素材のように感じる時があります」と、楽しそうに語る纐纈さん。
なんだか理科の実験をしているようで、ワクワクする作業です。

黒く色あげされた狼

いよいよ完成へ

背景となる黒い紙に、アクリル絵具でたくさんの花を描きこみます。

ふんわりと優しい世界観が展開されます

最後に、完成したモチーフを背景にネジで固定して、いよいよ完成です!

モチーフが金属のため、ネジで固定しないと重みで取れてしまうのだとか…。

イメージを、形に。

個展を開催するのはとても久しぶりだと話す纐纈さん。
七宝作品を作り続けた学生時代を過ごした纐纈さんでしたが、ここ10年ほどは仕事と子育てに追われ、制作に費やすエネルギーが持てなかったとのこと。
しかし2年前にようやく、作品をつくりたい、という想いが込み上げてきたそうです。

「ずっと頭の中から出たり入ったりしているイメージがあったんです。
それを形にしようと思い立ちました。」

選んだ技法が、今回の「打ち出し」。
いろいろな制約や環境、想いに即した表現技法でした。

纐纈さんが物語から想像し、思い出し、考えさせられた言葉が、イメージとなって現れた世界。
それらを見る人にもまた、独自の自由な物語と想像力が呼び覚まされる展示空間が広がることでしょう。
会期が楽しみですね!

纐纈浩美展
2023年4月23日(日) ~ 2023年4月29日(土)
12:00~18:30 /月曜休 / 日曜〜18:00、最終日〜17:00迄

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