〒101-0031東京都千代田区東神田1-13-17 森ビル1F
Google マップで見る >

OPEN 12:00  CLOSE 18:30(土17:00、日18:00)
休廊日は展覧会により異なります

03-6206-0811

OPEN
12:00
CLOSE
18:30
(土17:00、日18:00)

休廊日は展覧会により異なります

さんさん レトロチックファンタジー

2023.06.02

2023.06.02

本日は、6月4日(日)から個展を開催する、さんさん氏についてご紹介いたします。
※このブログでは作家さんを「さん」付でお呼びしているのですが、本記事に限り敬称を「氏」に変えてご紹介いたします。

イラストレーターとしても活躍しているさんさん氏。
SAN-AI GALLERYではお馴染みの作家さんの一人です。

幼児絵本なども手掛けているその作風は、柔らかく、温かみのあるキャラクターたちが和やかに世界観を作り出しています。
日常生活の中で何気なく使っているもの、目にしているもの、溶け込んでいるもの、食べているもの(!)…。
それらが自我を持って、動き出したら。
可愛らしくおしゃべりをしていたら。
幼い頃に夢見たファンタジーの世界が、可愛らしく、そして時にはシュールに、ユーモアたっぷりに描かれます。

「レトロチックファンタジー」と題した今回の個展では、懐かしい遊び道具、食べ物、古めかしいもの、時代など、“レトロ”から連想されるイメージを膨らませた作品の数々が並びます。

さんさんワールドの住人たち

さんさん氏の作品を語る上で欠かせない、ユーモア溢れるキャラクターたち。
早速作品のご紹介とともに、個性的な彼らの一面を覗いていきましょう!

まずは「ドライフルーツさん」。
さんさん氏の代表的キャラクターの一人です。

果物を取ってきてドライフルーツを作り、身体に貼り付けているキャラクター。
細かいことは気にしない性格で、せっかくくっつけたドライフルーツも、つきが甘くてポロポロ落としてしまいます。
でもそれらを収穫できた喜びでいつも満足!

今回のシーンは夜のお祭りでしょうか。
射的、金魚すくい、わたあめ…。
太鼓や盆踊りなどの音が夜の世界に響き、子どもの頃にワクワクして出掛けたシーンが思い起こされます。
ふと屋台のあんず飴を見てみると、そこにはドライフルーツさんの姿が…!
あんず飴を発見して、ご満悦です。

「飴と一緒にモナカに座り込んで、本人も水飴でベタベタ。
しかし、あんず飴を収穫できた喜びで、あまり気づいていません。
果たして立ち上がれるのでしょうか。
お尻にモナカがくっつきそうです。」

周囲に描かれた鳥たちが、ドライフルーツさんの性格や、このシーンの物語を見る人に語りかけます。
右側の鳥さん、脚に水飴がくっついてしまっています…!

あんず飴の部分は、ニスを塗りツヤツヤにしてあるのだとか。
会場で実物をご覧になる際には、ぜひ質感の違いなどにもご注目ください。

続いては、「けんけんパン」。

「けんけんパン」

先ほどご紹介したドライフルーツさんが、学校給食で目にした小分けいちごジャムを使って、“けんけんパー”の丸を、これまた懐かしい角切り食パンの上に描いています。
女の子が楽しそうに遊んでいる横では、牛乳を持った男の子や、へのへのもへじを楽しそうに落書きするカエルの姿も見られます。
マーガリンに止まる鳥たちが可愛らしいですね。

さんさん氏の作品では、思わずくすりと面白い、ダジャレ系の絵も豊富ですが、この作品もまさにそのひとつ。
モチーフとなる“けんけんパー”から連想して、“けんけんパン”というイメージに行き着いたのだとか。
懐かしい小学校のワンシーンや、給食を取り上げた、懐かしさを呼び起こす作品です。

「けんけんパン」制作途中の一コマ。
まだキャラクターたちに輪郭が描かれていない、色塗りの状態です。
右側にはアクセントとなる、たくさんの赤が。
ジャムやランドセルなど、微妙に異なる赤い色が目を惹きます。

「下書きの段階で構図を決めて、背景はそのときの気持ちで自由に描写します。」

遠くにふんわりと浮かぶ校舎のシルエットが、背景のワンポイントになっています。

続いてご紹介するのは、「カステラさん」です。

「どこから来たのカステラさん」
足の裏にはザラメがついています…!
旅のお供である杖は、楊枝でできています。
貴重な制作途中の画像もいただきました!
この作品の手法はウッドバーニング(後述)でしょうか…?

今回の「レトロチックファンタジー」で展開されるカステラさんは、大名行列のように海から歩いてくる姿が描かれます。

「どこから来たのカステラさん 長旅」
カステラさん御一行。
周囲には、ひだ襟をつけた南蛮風ボーロさんや、傘や荷物を持つこんぺいとうさんも描かれます。

このカステラさんにまつわる連想ポイントは、ポルトガルです。
カステラは16世紀ごろに、ポルトガルから伝わったとされる、いわゆる南蛮菓子です。
鎖国時代にあった日本で、唯一海外に開かれていた長崎から上陸したとされるカステラ。
さんさん氏の手にかかると、こんなにユーモラスに描かれてしまうんです!

「カステラは遠いポルトガルから来たので、船から降りて日本に入ってきたところを描いています。
屏風絵から着想を得ています。」

お次は「猫瓶と飴猫」です。

「猫瓶と飴猫」

駄菓子屋さんにたくさん並んでいる、飴の入ったあの瓶は“猫瓶”という名前なのだそうです。
そこから着想を得たさんさん氏。

「瓶から猫っぽく脚が生えて、脱走したら面白いかなと思って。」

体のなかに飴玉たちを蓄えたまま、夜の街を走ります。
体が発光しているのが面白いですね。

周囲には、飴猫が咲く植物が。
尻尾が葉っぱのモチーフになっているのが素敵です。
ガラス瓶の硬さを和らげたいと、柔らかいモチーフをと考えて書き加えた、さんさん氏らしい構成です。

制作途中の「猫瓶と飴猫」の画像。
こちらの作品はペン画によるもの。
背景の細かい線入れが、版画作品のような味を画面に添えています。

そして最後に、立体作品「けん玉オブジェ」をご紹介いたします。
さんさん氏おなじみのキャラクターたちを模した、けん玉の数々。

左から 飴猫、ビアアフロさん、オリーブさん、ドライフルーツさん

制作工程としては、アイディアを固めた後、けん玉に下書きをして、それをなぞるようにウッドバーニングで線を入れていきます。
ウッドバーニングとは、電熱ペンを使って、木を焦がすことで絵を描く手法です。
先ほどご紹介した「カステラさん」でも、このウッドバーニングが使用されていました。

ドライフルーツさんの顔をウッドバーニングで描いているところ。
ボディにはうっすらと下書きが残っています。

ウッドバーニングで輪郭を描いた後は、絵の具で色をつけていきます。
絵の具の種類は、アクリル、水彩など、表現したいモチーフや状況で使い分けます。

細い筆で、丁寧に色をつけていきます。
絵の具が乾いたら、ニスを二度塗りし、色が落ちないようにコーティングします。

「オブジェとしてもいろいろな置き方ができて楽しいです」と話すさんさん氏。
頭が取れたり、転がったり。
可愛いだけでないキャラクターたちの性格を表すのに、うってつけの媒体です。

世界観をつくりだす、あれ、これ。

たくさんの作品とキャラクターをご紹介してきましたが、さんさん氏の作品は、一貫した制作技法や画材の特徴などがありません。
ありとあらゆる画材、素材を駆使した作風で、キャラクターたちを描き出します。

「あまり技法や作風に一貫したこだわりはありません。
その時にマッチした方法で自由に描いたり作ったりしています。」

なるほど、媒体や手法、キャンバスの大きさや形など、多種多様に展開される作品たちは、そのキャラクターを表す個性の一部として、機能しているのかもしれませんね。

手法に制限をつけないからこそ、さんさん氏の制作にはアイディア出しが何よりも重要です。

「アイディアを出す時が一番時間がかかります。
風や動きを感じられるように、構図のバランスにはかなり気をつけています。」

構図だけでなく、彩色にも時間をかけて、キャラクターたちを生み出します。
思わず笑ってしまうような物を一緒に描き込むのも、さんさん氏のこだわりポイントです。

愛らしいキャラクターたちを、いかに画面の中でいきいきと、意志を持たせて動き出すようにできるのか。
個性的で魅力的なキャラクターたちは、さんさん氏の綿密な愛情から、画面の中に生み出されていきます。

「可愛いけど、可愛すぎない。
シュールで、時にはどこか抜けていて、でも一生懸命で自然体。
彼らは、ただそこに居てくれるだけでこちらが幸せになる、愛おしい存在です。
見た後になんだかじわじわ気になって仕方ない、そんなキャラクターたちを作り続けたいと思っています。」

自身が感じる愛情や、楽しい、面白いと思う感覚が、見る人にも伝わったら嬉しいと話すさんさん氏。
そんな強い想いが伝わっているのか、さんさん氏の作品を見にいらしてくださる方たちは、さんさん氏よりも熱く、楽しく、キャラクターについて語ってくれるのだと言います。

じわじわと侵食されるように、不思議とはまってしまう、さんさんワールド。
「レトロチックファンタジー」をきっかけに、キャラクターたちの魅力を見つけにいらしてください。
気がついた頃には、きっと彼らの虜になっていることでしょう。

さんさん個展 レトロチックファンタジー
2023年6月4日(日) ~ 2023年6月10日(土)
12:00~18:30 /月曜休 / 日曜〜18:00、最終日〜17:00迄

Page Top