丸橋正幸 × 岡田佐知子 -きらら- 開催中です!
- 制作の現場から
2024.01.17
〒101-0031東京都千代田区東神田1-13-17 森ビル1F
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OPEN 11:30 CLOSE 18:00(最終日17:00)
休廊日は展覧会により異なります
03-6206-0811
2022.11.21
前回に続き写真家・谷田梗歌さんの制作過程をご紹介します。
個展の準備も進み、いよいよ展示用の大型作品をプリントするために、谷田さんは写真弘社にて打合せを行いました。
写真弘社さんは日本を代表するラボとして知られ、美術館に収蔵されるプリントも数多く手がけています。
打合せのお相手は柳澤由利さん。
柳澤さんは同社の現場を指揮されている方で、写真家が持ち込む作品の背景にあるイメージや意図を共有した上で、色味や濃度コントラストなどの具体的な指示を現場に出し、作者がイメージした通りのプリントを実現してくれます。
谷田さんは、自宅の設備では対応できないような大型の作品を、いつも写真弘社でプリントしています。
事前に作成したテストプリントを持ち込んで机上に並べ、柳澤さんと打合せをします。
(谷田)
今までの私の作風からするとなんか普通ですけど、栗駒山と氷、というテーマです。
春、夏、秋の栗駒山の風景から始まって、冬景色。
それに続けて氷の写真が6,7点並んで、最後は雪原で締めます。
(柳澤)
栗駒山の展示は初めてですか。
(谷田)
個展で展示するのは初めてですね。
グループ展では駆け出しのころに出したことがあるんですけど。
昔、いわゆるネイチャーフォトを志した時期があって、その頃に取り組んだのがこの栗駒山だったんですよ。
(柳澤)
いいねえ。谷田さんの風景写真は初めて拝見したけど、ゆったりと撮っていらしていいじゃない。
雄大な感じで。
凄く良い切り取りで。
(柳澤)
この写真、素敵だね。
よくこんな所で撮れたわね。
寒かったでしょう。
(谷田)
寒さより風が凄くて、うっかりすると私自身が飛ばされてしまいます。
これでシャッタスピード1/60秒ですよ?
この日は1/500秒でも雪が止まって写らなかったもの。
(柳澤)
あぁそう…(絶句)。
でも雪がこう流れてて、いいわねぇ。
右奥にある木立をもう少し濃くプリントした方が良いね。
そうすると雪が全体的にもっと見えてくる。
(谷田)
その方が良いですか?
吹雪をしっかり見せる?
(柳澤)
雪景色の写真は世の中たくさんあるけれど、こういう猛吹雪の中で撮った景色はないでしょ、あまり。
(谷田)
そうですね、こんな天候のなか撮影機材担いで山奥に出かける馬鹿はそういないですよ。
遭難してしまう。
(柳澤)
いやぁでも、凄いよね。
(谷田)
こうして作品全体を見渡してみて、どうでしょう?
ガスのかかった風景が多いので、全体的にコントラストが低い、柔らかい諧調の写真になるイメージですが。
(柳澤)
これを見ると全体的にグレーっぽいんですよね。
モノクロ写真というのは真っ黒と真っ白のグラディエーションなので…。
もう少し黒を引き締めた方が良いかなと思います。
(谷田)
そうすると例えばこの写真。これは湿原なんですけど、一部に土が露出して黒く見えている。ここの草とか土の質感を残しながら引き締まった黒にできます?
(柳澤)
うん、もう少しパキッと引き締まった黒にした方が、全体に陰影があって良いと思います。
全体に霧がかかっている中に、手前から右奥へ向かう流れが画面を引き締めているから、それを活かした方が良いんじゃないですか。
(柳澤)
この写真。秋ですか?
綺麗な空なんだけど、ちょっと暗いような。
(谷田)
ガスかかった写真に合わせて、コントラストを低めにしたのでそう見えるのかもしれません。
でも、作品全体的にコントラストを高めにするなら、これももう少しハイコントラストにしたいですね。
(柳澤)
コントラスト上げて、秋の抜けるような青空に対して雲をもう少し白くしたいわね。
全体の構成を考えても、春夏秋で引き締まった黒を見せていくことで、雪や氷と対になって、展示の流れが良くなると思います。
(谷田)
それでいきましょう。
写真弘社さんのプリントは特に黒の表現が美しいから、期待しています!
今回紹介したやり取りは短縮された内容ですが、こうした綿密な打合せ30分ほどかけて行いました。
どれほどに素敵な仕上がりになるかワクワクしてきますね。
ネイチャーフォトを志していた頃の谷田さんと、氷をモチーフにシャッターを切る現在の谷田さん、そして写真弘社による共演を楽しみに、谷田梗歌展「栗駒山と氷」の開催をお待ちください。
谷田梗歌 展
2022年12月4日(日) ~ 2022年12月10日(土)
12:00~18:30 / 日曜 12:00~18:00 / 月曜休 / 最終日〜17:00迄